文学、漫画、アニメ、ゲーム、ありとあらゆる創作物に存在し、少数ながら熱狂的な支持者が存在するジャンル。
それがいわゆる「鬱」。
鬱漫画、鬱アニメ、鬱ゲーなどの言葉が誕生する昨今。
この「鬱」ジャンルを愛好するのは決して悪趣味な人なんかじゃないんです。。。
「鬱」であるからこそ、悲惨であるからこそ、人の業を暴き出す。
忘れてはいけない、見つめなおさなくてはいけない。
そんな人間の恐ろしい部分や悲しい部分を思い出させてくれる。
そんな屁理屈にも近い気持ちから鬱ジャンルを愛好することはや10年。
そんじょそこらの鬱作品は一通り読み(見)まくり。
偏りまくった趣味志向全開のTwitterのフォロワーは5800人。(なんと仲間の多いことか)
そんな私の、ガチで寝込んだ究極のおすすめ鬱漫画を厳選10作品まとめました。
ガチで寝込んだ究極の鬱漫画おすすめ10選
【語り継がれるべき鬱】永井豪『デビルマン』

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1972年連載開始、永井豪先生の傑作『デビルマン』。
50年経った現在の若者でも、みんな名前くらいは聞いたことがある。
50年も読み継がれるってのはもう完全な名作で間違いなんですよ。
永井豪先生は、『キューティーハニー』や『けっこう仮面』など、お色気系の漫画でも有名。
ですが、この『デビルマン』、何がどうなってそうなったのか…とんでもない鬱漫画です。
長い眠りから目覚めた「デーモン」(悪魔)が、かつての美しかった地球を汚した人類を滅ぼそうとする。
しかし、強い理性を持った主人公・不動明はデーモンをその体に受け入れ、理性を持ったデーモン=デビルマンとして人類のためにデーモンと戦う。
と言う話なのですが、今まで敵知らずだった人類が、初めての天敵によってどんどん混乱していく様、
その本性の醜悪さ、
それが痛いほど炙りだされた話になっています。
果たして本当に悪魔のような行いをしているのは人類とデーモン、どちらなのか。
また、かつての美しい地球を夢見るデーモンたちと、人類、どちらかが悪いと決められるのだろうか?
など、など…
「じゃあどうすれば良かったんだよ…」となるような救いのない、そして幻想的な終わりを迎えます…
これを初めて読んだとき、本当に寝込みました。
元々、人類をそんなに素晴らしい生き物ではないと思っている派の人なので、かなり人生やめたくなりました。
人間の醜悪さを刮目せよ。
たった5巻(紙のものは3巻)に詰まった人間の業。
これは後世に語り継がれるべき傑作です。
【不条理な運命を受け入れる鬱】沙村広明『ブラッド・ハーレーの馬車』
最近『無限の住人』が映画化していた沙村広明先生の代表作です。
とにかく少女がめちゃくちゃ過酷な運命に翻弄されます。
性描写が苦手な人はダメかもしれません。
この漫画はとにかく「不条理」。
とにかく何の罪もない健気な少女たちがボコボコになります。
鬱ジャンルが苦手な人からしてみたら、
「そんなのを見てどうする」
って話なんでしょうが…。
人間の黒い一面をいつでも見つめていたいのが我々鬱ジャンル愛好家ですから…。
この本にハマってしまった人には、沙村広明先生の画集を読むことをおすすめします。
無残絵というものの画集なのですが、素晴らしい世界にトリップできるでしょう…。
▶︎「人でなしの恋」
【不幸せの幸せという鬱】石井隆『天使のはらわた』
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あまりにも同世代認知度が低い作品ながら、めちゃくちゃ鬱&めちゃくちゃ最高だったので選びました。
成年漫画ではないのですが、ちょっとあれな描写が多いため、めちゃくちゃピンク映画になっています。
でもそんなこと関係ないんです。
ネタバレなしのふんわりとした内容はこんな感じ。↓(私のツイートです)
もうね、主人公がサゲチンなんですよ、究極の。
全てが空回りして、愛した女は愚か、周りにいる全ての人たちを不幸にしていく。
そして主人公もどん底。
みんなどん底。
最後まで最悪なことしか起こらないんだけど、なんかちょっとだけ幸せな終わりなんです。
そういうのを私は大親友と、「不幸せの幸せ」って名付けたんですが、まさにそんな感じ。
「不幸せ」には違いないんだけど、なんとなく「幸せ」なんですよ。
『ブラッドハーレーの馬車』とは対照的に、ちょっとだけ幸せな鬱漫画。
男の魂の叫びが聞こえてくるような、石井隆先生の傑作です。
【童話のように紡がれる鬱】鬼頭莫宏『なるたる』
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「アンインスト〜ルアンインスト〜ル」で有名な鬱漫画(アニメ)『ぼくらの』の鬼頭莫宏先生。
もちろん『ぼくらの』も鬱ジャンル愛好家の必修なので読了済み。
ですが、個人的にはこちらの『なるたる』の方がもっと鬱に感じます。
タイトルは「骸なる星 珠たる子」という謎めいた言葉を意味します。
キャッチコピーは「未来に贈るメルヘン」「夢はでっかく地球サイズ」という可愛らしいものです。
が、とんでもない。
「竜」なるものが登場し、鬼頭先生の描く繊細で華奢な登場人物たち。
とても神秘的で、まあ「メルヘン」は「メルヘン」なのですが…。
やっぱりみんな悲しい感じになります。
しかも結構痛い描写も多め。
澁澤龍彦選のアンソロジーに『暗黒のメルヘン』という本がありますが、まさにその言葉がぴったり。
調べるとネタバレにあたるので要注意ですが、10巻は漫画史に残る最強トラウマ鬱シーンあり、です。
そして、
「命は代替がきくから命たりえるんだから」
鬼頭莫宏『なるたる 12巻』
という「えっ?」と思わせるようなセリフ。
考察するのもとても楽しい鬱漫画の傑作です。
読後感はかなり人によると思います。
私は鬱になりながら読み進めましたが、最後は何だか爽やかな気持ちでした。
全然一般的にはハッピーエンドとは言えないような終わり方ですが。
鬱というジャンル関係なくしても、人生ベスト5の漫画です。
【想像を絶するほどの鬱】山野一『四丁目の夕日』
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「鬱漫画」として世に出回っている漫画は一通り読みましたが、その中でダントツだったのがこれ。
とにかく不条理。酷すぎる。
こんな酷い運命があっても良いの…?
と鬱漫画愛好家ですらちょっとびびってしまうくらいの展開。
想像を遥かに超える壮絶な鬱展開。
あまりに酷い。
しかもこれ、登場人物の境遇などが身近で、何とな〜く、あり得ちゃいそうな話なのがさらに怖い。
受験を控えた真面目な学生の主人公。
小さいながらも家族のために工場で一生懸命働くお父さん。
その日常が突然壊れる。一瞬にして。
あり得ないような酷い話なのだけど、なんかリアル。
そこが作者の力なのかもしれません。
途中で読むのをやめてしまいたくなるような最強鬱漫画です。
感情移入はできないけれど、そんなこと抜きで落ち込む・寝込むこと必至。
【人の心を持つという鬱】三原ミツカズ『DOLL』
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レース、フリル、美少女、ゴスロリ。。。
数多のゴシックロリータたちを魅了し、『死化粧師』などで有名な三原ミツカズ先生の漫画。
人間そっくりのロボット『DOLL』が生活の一部となった世界の話。
アンドロイドや人クローンなどがもたらす惨劇は、カズオイシグロ『わたしを離さないで』や、映画『A.I.』などでも指摘されています。
この『DOLL』も、アンドロイドの悲しみ、というのももちろんあります。
が、それと関わる人間の方に、個人的には更にきついものを感じました。
というか、繊細な繊細な心というもののおかげで人間たちはいつの時代も苦しむんですね…。
オムニバス形式で一話ずつも楽しめますが、やはり全体を通した大きな話も好きでした。
一番しんどかったのは23話。
普通の人達の何気ない言葉が ああ
私には刃のようで
三原ミツカズ『DOLL 4巻』
というセリフの出てくるシーンが、鬱の時の人との「噛み合わなさ」や「生きづらさ」をズバリ表していて刺さりすぎました。
多種多様な鬱が出てくるので、それぞれ刺さる話がきっと見つかります…。
そして安定して絵が恐ろしく美しいのでそちらもお楽しみください。
【子供じゃなくなるという鬱】楳図かずお『わたしは真悟』
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ホラー界の大スター、ホラーファンじゃなくても誰もが知っている楳図かずお先生の漫画。
これ、全然鬱漫画って感じじゃないです。
他の楳図かずお先生作品よりホラー要素を削ったSF漫画の傑作として有名なのですが、、、
23歳のある日、これを一気読みして、まさかのスーパー鬱モードに。
なぜかっていうとね、物語の始まり。
二人の小学生が恋するんです。
二人は産業型ロボットに夢中になり、そこから事件ははじまります。
大人の都合で、二人は引き離されそうになるのですが、、、
そこから突然の鬱。
やたらとこの二人、「子供であること」に拘ります。
「大人なんて、みんなちがう生きものになっちゃうのさ、きっと…
だってぼく達が大人だったら、たぶんこんな所へは来なかったはずだろ!?」
楳図かずお『わたしは真悟 3巻』
何だか、「大人になって私たちはどうすんだ…」という気持ちになってきちゃって。
子供の頃見えてた世界がどんどん見えなくなって、世界が小さくなっている気がする。
そんなふうに思いはじめてしまい、読み終える頃にはもうスーパー鬱でした。
他の9作品より内容としての鬱度は低めなのに、一番読後引きずりました。
何ならこの記事書いている今も、いまだに「大人になってどうすんだ…」と思ってます。
心が大人になりきれてない人が読むと間違いなくやられる最強鬱漫画ですよ…
【視点を変えると見える鬱】藤子・F・不二雄『ミノタウロスの皿』
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藤子・F・不二雄先生の後味の悪い短編代表作。
別の世界に行ったら、ウシが世界の頂点だったって話です。
もちろんヒトもいる世界です。
我々は地球の頂点に長いこと君臨していますが、ウシが頂点だったらどうなるんでしょうかね…?という感じ。
視点を変えると良いことも悪いことに、悪いことも良いことに。
そういうまた別タイプの鬱です。
「いやいや、『ミノタウロスの皿』くらい知ってるわ!常識だろ!」
という方に是非読んで欲しい藤子・F・不二雄作品、あります。
同じシリーズの6巻に入っている『絶滅の島』です。
こちらも、「視点を変えると見える鬱」。上級編です。
「う〜む…」と考え込んでしまう作品です。
【大好きなのに大嫌いな鬱】中村珍『羣青』
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めちゃくちゃ近すぎて大好きなんだけど大嫌いな人っていません?
そんな関係を描いた百合漫画です。
百合漫画の名作として有名な漫画なのですが、同じように大好きなんだけど大嫌いな人がいる人にとっては超鬱です。
人間関係なんて、優越感と劣等感をお互い抱いていて、そのバランスで成り立っている。
それは子供の頃からあるみたいで。(吉行淳之介『子供の領分』という短編でよくわかります)
でも、近すぎて、大好きすぎて、距離感ぶっ壊れた相手に限って、そのバランスってめちゃくちゃ取りづらい。
そういうわけで色々大変なぶつかり合いがあるみたい。
特にこの漫画は、私がそういう距離感ぶっ壊れ親友と大喧嘩してた期間に読んで超落ち込みました。
自分が相手に対して抱いている劣等感、優越感、そして大好きな部分と、嫌いな部分。
そういうのを客観的に見ているような気分になって非常にしんどい漫画です。
大事な人がいる方必見の鬱漫画。
【犯人の動機が鬱】『金田一少年の事件簿』
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「え?最後にこれ?」と思うかもしれません。
私も読む前は全然鬱漫画なんて認識ありませんでしたよ。
何ならミステリー嫌いの私はマガジンでいつも読み飛ばしてましたよ。
でもある日、大親友に言われたんです。(さっきの大喧嘩した大親友です)
「金田一少年の事件簿、鬱すぎるから読んで…」と。
ピックアップされたものを中心に読み、驚愕。
鬱展開にも程がある。
基本的には殺人事件が発生▶︎金田一少年「じっちゃんの名にかけて!」▶︎解決
という流れなのですが、犯人の動機がヘビーすぎる。
え…え…そっか…そんなことがあったんだ…それならもうそうするしかなかったよね…
と思わず言ってしまいたくなるような話ばかり。
何なら、家庭環境に恵まれ、才能に恵まれ、温かい人々に囲まれ、順風満帆に生きてきた金田一少年の
「生きてればなんとかなる」
精神にムカついてきます。
「お前はな!?」と大親友とツッコミまくりましたよ。
それくらい悲しすぎる過去を背負った犯人達。
めちゃくちゃ鬱になり、そして楽観的な人間に腹まで立つ恐ろしい鬱漫画。
それがこの『金田一少年の事件簿』です。
ただのミステリーだと思って侮るなかれ!
個人的におすすめな鬱度高めの回⬇️
- ファイル2 異人館村殺人事件
- ファイル6 悲恋湖伝説殺人事件
- ファイル7 異人館ホテル殺人事件
- ファイル8 首吊り学園殺人事件
- ファイル9 飛騨からくり屋敷殺人事件
- ファイル11 タロット山荘殺人事件
- ファイル16 黒死蝶殺人事件
鬱の時こそ鬱漫画読め
「鬱の時こそ鬱漫画読め」
鬱の時に明るい話、聞くとなんか自分だけが上手く行ってない気持ちになってより沈みませんか??
いや、気持ち切り替えようって時に明るいものに親しみたい時も、なくはないのですが…
それよりも、自分と同じように鬱になってる人、
自分以上に不条理な目に遭ってる人、
そういうものに触れた方が何だか落ち着く。
めちゃくちゃ鬱の時は本当、鬱に浸りたいです…
割と沈みきったら楽になりますよ。
生きよ堕ちよ
坂口安吾『堕落論』
です。堕ちきることで見えるものがある。
堕ちきることで進めることもある。
鬱漫画愛好家の筆者の鬱回復魔法【小説編】はこれです⬇️