1.本こそ悩みの救世主
◆悩んだ時は、本が一番「効く」
もちろん最初は親や友達に相談したり、ネットで検索したりします。
でも、正解があるわけではない抽象的な悩みや、複雑な悩み、特に精神面での悩みの時、本は力を発揮します。
◆だって同じ悩みがきっと見つかるから
本って、世界中にそれはもう一生かかっても読み切れない数が存在しますよね。
しかもその作者は、我々よりもずっと賢かったり、もっと酷い時代を生きていたり、そんな人たちです。
それなら、その中に自分と同じ悩みの本や、なんなら既にその悩みを解決しちゃってる本だってありそうじゃないですか?
それを見つけ出せればこっちのものです。
解決することだってあるし、解決しなくても、同じような悩みだなあ…なんて思うと、ちょっと救われたりします。
でもきっと、悩みに合う本を見つけられない人も多いと思います。
そんな人の為に「悩み別本紹介」をしたいと思います!
第一弾は、やっぱり変態文学と繋がりの強い「恋愛」に絞ってみました!
状況と悩みへの効き方タイプ別にしたので自分に合ったものを探してみてください(/・ω・)/
2.傷心部門
ゲーテ『若きウェルテルの悩み』
- 状況:主人公→ヒロイン=婚約者
- 対象:片思いに敗れて傷心の人
- あらすじ:ウェルテルは美しいロッテと恋に落ちるが、ロッテには婚約者がいて叶わない恋に苦しむ話。
- 長さ:214ページ
言わずと知れた片思い文学界の超名作ですね。
片思い拗らせ男子のグチグチした話でしょ?なんて甘く見ていた私は最近初めてこれを読んでかなりの衝撃を受けました。
けれど――ぼくも全然無罪かしら。
ゲーテ,『若きウェルテルの悩み』,高橋義孝訳,新潮文庫
「婚約者がいるくせに僕にちょっかいだして!コノヤロー!好きだけど憎いぜ!」を想像していた私。
1頁目に出現するこの部分に本当に驚きました。
この悲惨な片思いを、相手のせいにしないなんて!ここから見直し、一気に引き込まれて行きました…。
美しくロマンチックな恋愛の様子や、恋の苦悩の描写の他にも、「生きていく」ことの悲しさや、死への考察がたっぷりのまさに名作。
結局恋は実らないので解決はしませんが、悩み共有レベルが非常に高いので気持ちは和らぐこと間違いなしです。
ツルゲーネフ『はつ恋』
- 状況:主人公→ヒロイン(男たらし)→おじさん(主人公の父)
- 対象:苦い初恋で傷心の人、不倫で傷心の人
- あらすじ:男たらしな美少女に翻弄される16歳の主人公の淡い初恋が、不気味で美しい結末を迎える話。
- 長さ:132ページ
ロシアの文豪ツルゲーネフの本作は新潮文庫100選にも選ばれていますが意外と読んだことが無い人が多いのでは。
男たらしのヒロインに翻弄される純粋な少年の恋心に感情移入できるのはもちろん、ヒロイン→主人公の父、の片思いに感情移入も可能です。
「こんな人生が、束のまの満足のために危険を冒してはならないほど大事なものだと、真顔でわたしに説教なさるおつもりね。——わたし、もう幸福なんかどうでもいいの」
ツルゲーネフ『はつ恋』神西清訳,新潮文庫
このヒロインの強気なセリフのように刹那的な恋を肯定するも良し、
初恋は実らないという言葉通り実らずに淡く終る主人公の初恋に共感するも良し。
自由に読み解ける恋愛本です。
三島由紀夫『愛の渇き』
- 状況:亡き夫の父→主人公(未亡人)→若い男⇔若い女
- 対象:嫉妬に狂いそうな人
- あらすじ:夫の死後、夫の父と関係を持った主人公であったが、同時に召使の若い男に惚れてしまう。その男に恋人がいると知り、主人公が嫉妬に狂っていく話。
- 長さ:231ページ
三島文学の中でも最も完成されたものである故に、知名度がそこまでない作品。
最も重要なテーマは「嫉妬」で間違いなさそうなお話です。
こちらもウェルテルと同様に、恋愛に苦しんだ末に出て来る「死」という問題にも深く切り込んでいます。
また、主人公が周りの人に「失恋癖」と言われるシーンが印象的です。
何度も実らない恋にハマってしまう人が読めば、客観的に自分を見つめ直せるかもしれないです。
最後の方は、主人公がどんどん恐ろしい女に変貌していきます。
あの手この手で若い男を自分のものにしようともがき、主人公の愛の渇きがもたらした恐ろしい解決をご覧あれ…。
川端康成『雪国』
- 状況:駒子⇔主人公=妻
- 対象:不倫やめたい人
- あらすじ:国境の長いトンネルを抜けて雪国に到着した主人公が芸者と不倫するけど家に帰る話。
- 長さ:174ページ
めちゃくちゃ美しい文章でめちゃくちゃな趣を放った完全な名作なんですが、恋愛の観点からみると、普通の不倫小説です。
しかも、めちゃくちゃに芸者の美しさや純粋の素晴らしさを讃え続けるのですが結局ぼんやりとした理由で家に帰ります。
これを読んだらどんな人でも目が覚めます。
離婚先延ばしにする人は待って立って絶対してくれない。
そう諦めさせてくれる恋愛小説としても『雪国』は名作なのです。
「ほんとうに人を好きになれるのは、もう女だけなんですから。」
川端康成『雪国』,岩波文庫
しまいにはこんなこと言わせてます。さあ、不倫で悩んでいるすべての人は今すぐ『雪国』読んで諦めちゃいましょ。
3.ネガティブ改善部門
太宰治『斜陽』
- 状況:主人公→男=妻
- 対象:道徳そっちのけで突っ走りたい人
- あらすじ:没落貴族の娘である主人公が、家族が悲惨な死を遂げていく中、恩人の男と不倫の関係に陥り苦しむ話。
- 長さ:230ページ
こちらも有名で、たくさんテーマはありますが、恋愛に絞ると、なんとも積極的な主人公に勇気をもらえます。
なんてったって
私は確信したい。人間は恋と革命のために生れて来たのだ。
太宰治『斜陽』,新潮文庫
ですからね。
ここまで言い切れるのならば、どれだけ突っ走っても問題ないでしょう。
うまくいくかどうかは別として、ここまでマッチョなメンタルを持っていれば、うじうじ悩んでいたのも吹っ飛びます。
谷崎潤一郎『痴人の愛』
- 状況:ナオミ>譲治
- 対象:メンタルをゴリラ並に強くしたい人
- あらすじ:貧乏出のナオミがわがまま放題に育って、めちゃくちゃ年上のおじさまを制圧する話。
- 長さ:377ページ
はい、得意分野です。これはもうすべての悩める女子に読んでほしい恋愛バイブルです。
どんな悩みも、ゴリラなメンタルさえあれば吹っ飛ぶ、そんな感じの本です。
貧乏な家のナオミを引き取った譲治は、ナオミを賢く美しく育てようとしますが見事中身の方は失敗します。
わがまま放題、浮気し放題、お金使い放題、そんなモンスターが出来上がりましたが、譲治はとても満足そうです…。
ナオミのようになろう!とまでは言いません。
しかし、これを読み終わる頃にはそれなりにゴリラメンタルの極意が分かるようになっているでしょう。
あとはあなただけの「譲治」を見つけるだけ!大事なのはゴリラメンタル!
できれば読んで知ってほしいですがひとつだけゴリラメンタルの極意を抜粋しておきます。
女の顔は男の憎しみがかかればかかる程美しくなるのを知りました。
谷崎潤一郎『痴人の愛』,新潮文庫
4.倦怠期部門
フローベール『ボヴァリー夫人』
- 状況:夫=主人公→男
- 対象:倦怠の恐ろしさを知りたい人
- あらすじ:結婚して夢のような生活を送るはずが倦怠に陥った主人公が、刹那的な恋愛の輝きに魅せられて不倫する話。
- 長さ:457ページ
世界十大小説の一つとされるフランス文学の名作である本作は、ズバリ「倦怠」が重要なテーマ。
好きな人と結婚して、ずっと一緒にいたいな…。
そんな風に思っていても、いざずっと一緒にいたり、片思いが両想いになった瞬間気持ちが覚めてしまう。
突如訪れる、そう、倦怠期。
その倦怠期から脱出できない人、この本を読むべし。
あなたは普通の結婚をするとボヴァリー夫人になります。
この本を読んで、緩やかな結婚生活と刹那的な恋愛のどちらに惹かれるか、もう一度確認してみてください。
そして倦怠の恐ろしさを思い知った方は、この本を反面教師にして生きてください。
吉行淳之介『暗室』
- 状況:誰とも結婚しない恋多き男
- 対象:倦怠期に陥りたくない人
- あらすじ:数人の女と恋愛関係を持っていても、誰とも縛られた関係を望まない男の話。
- 長さ:237ページ
「NO倦怠」な関係を絶妙に築く男の思想がたっぷり描かれた本作は、吉行淳之介の、谷崎潤一郎賞受賞作。
日常生活のにおいの染み付いている女の部屋は、私を落着かせない。
吉行淳之介『暗室』
生活感は時にはセクシーだけど、生活そのものの中で夢は中々生まれませんよね?
倦怠を排した、刹那的な恋愛の永久機関は、「NO倦怠」派の人々にとって憧れではあると思いますが、そんな生活も結構大変。
その生活の大変さと、その永久機関を保つ男の苦悩や覚悟、しかしそれによって得られる極度に官能的で刺激的な夢の生活。
倦怠は絶対イヤ!すぎて一生独身でもいいかな、という人必見の快楽主義の指南書です。
5.番外編
谷崎潤一郎『卍』
- 状況:夫=主人公⇔女の子
- 対象:恋する性別違うかもな人
- あらすじ:人妻の主人公がひょんなことから自由奔放な女の子との禁断の関係にハマり、夫を巻き込み破滅へ向かっていく話。
- 長さ:234ページ
なんだか恋愛が上手くいかないな~しっくりこないな~。
そんなあなたは、もしかしたら恋する性別違うかも。
本作は、同性ならではの気持ち通い度MAXな場面が乱発し、恋愛に新たな可能性を感じさせてくれる恋愛本。
※ちなみに筆者は女の子とも恋愛するので「口だけ」ではないですよ!
また、『痴人の愛』と同作者なのでもちろん出てきます、今回も、「妖婦」。
まさにこの主人公が恋する相手の女の子が妖婦で、ノンケの同性までも虜にするのでよりレベルの高い妖婦です。
そちらにメンタルゴリラ術を学ぶこともできます。
恋愛に違和感を感じたら一度読んでみるべし!ちなみに、男だからこれには共感できないな~という方には、三島由紀夫『愛の処刑』をオススメします。笑
リーラ・セフタリ『背徳の聖女』
- 状況:冒険家
- 対象:まだまだ飽き足らない人
- あらすじ:次々と扉を開けるように老若男女違う人々と寝る女の話。
- 長さ:248ページ
すべてのパターンで解決しない人はもしかしたらまだまだ遊び足りないのかも?
そんな方は今は絶版の官能小説文庫「富士見ロマン文庫」の『背徳の聖女』をどうぞ。
官能小説侮るなかれ。主人公は究極の哲学者。
独自のビッチ哲学を掲げて次々と新しい扉を開けていく主人公の姿に何かぐっとくるものがあります。
醜くい人間というのは、魂が干上がってしまった人間のことだ。
リーラ・セフタリ『背徳の聖女』小鷹信光訳,富士見ロマン文庫
こんな格好いいこと言われたら、同じ世界に入りたくなっちゃいますよね?え?ならない?
※ここでも一応。筆者は冒険済みなので「口だけ」ではありません!
6.終わりに
以上10個のタイプ別に、恋愛に効く本を選んでみました。
誰もが通る恋愛の悩みから、ちょっと特殊な悩みまで揃えてみました(/・ω・)/
どれも文学的な評価が高い作品なので違うタイプのものも是非!